<特集>東京大学分子細胞生物学研究所K教授による論文大規模捏造事件(1)
 
WJN編集部が論文大規模捏造事件についてお答えします。
 
 
<質問1> この事件について教えて
この事件は、2011年暮れから2012年1月にかけてインターネット上にアップされたある告発者のブログです。
WJNの取材によって明らかになった範囲では、元々匿名掲示板で指摘されていたものをまとめたもののようです。
ブログの管理者はこの捏造疑惑を文部科学省と東京大学に申立書を送りました。
 
この告発された論文は2001年から2011年の10年間で24報に及び、その中にはNatureやCellといった権威ある雑誌が多数含まれていました。
また、その全ての論文に名を連ねるK教授は日本分子生物学会で理事を務めた経験があり、また、捏造問題のワーキンググループに入っていたことなどから、研究者コミュニティに大きな衝撃を与えました。
このブログには大手動画投稿サイトYoutubeに検証動画をアップするなど、ユニークな公表方法をとりました。
この告発方法の斬新さと、捏造の重要性から米国の権威ある科学雑誌ScienceのオンラインニュースであるScienceInsiderでこの問題は取り上げられました。
 
 
<質問2> 捏造ってなに?
多くの場合、捏造とはやっていないデータをでっち上げることを言います。
他にも、データを書き換える改ざんや、他の研究者のアイデアやデータを勝手に使う盗用などが科学的な不正として存在します。
 
 
<質問3> どうして捏造が分かったの?
今回の事件で発覚した捏造の多くはウエスタンブロット法についてのものです。
ウエスタンブロットは電気泳動と呼ばれる方法で分離されたタンパク質をメンブレン上に吸着させて、それを抗体によって検出する手法です。
この方法を用いることによってサンプル中に含まれる、目的のタンパク質を見つけることができます。
本来この方法によって見えるバンドと呼ばれるシグナルは、それぞれ異なった形をしています。
今回指摘された論文では、同じ形をしたバンドが多数あったり、不自然に修正されて使用されていたりしました。
 
 
<質問4> これからどうなるの?
WJNは今回の事件について使用された研究費を調査中ですが、その額は数千万円から数億円に及ぶと見られており、その原資は国民の税金です。
論文の捏造が認定された場合、どのように処理されるかが注視されます。
また、本件については東京大学のみならず、K教授研究室出身の筑波大学や群馬大学などの教員においても捏造が疑われており、このことも更なる調査が必要です。
 
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